藤井快哉 ピアノ・リサイタル「プレイズ・ショパン発売記念」

藤井快哉ソロ・ディスク発売を記念してリサイタルを開催致します。

オール・ショパン・プログラムの濃密なひととき、まさにショパンの人生を一緒に歩む一夜です。

ぜひご期待ください。

小野亮祐氏(音楽学)によるプログラムの見どころ

■即興曲 第1番 変イ長調 作品29
Impromptu(即興曲)と題されてはいるものの、実際に即興によるものかは不明だ。この時代には一種の即興風の自由な作品を指すことも多い。しかし、友人の証言によれ ばショパンは幼い時から即興の名手であったそうだ。当時の鍵盤楽器奏者は伝統的に 即興演奏ができることが当然であり、演奏会プログラムには楽曲名が並ぶ中に「即興」と題された演目があったくらいだ。そんな時代に、大ホールでの演奏よりも、小規模なサ ロンでの演奏を好んだと言われるショパンは、即興演奏を交えた親しい人との音楽を通 した楽しいひと時を過ごしたことだろう。
この曲は3つの部分に分かれてり、中間部分で 少し落ち着いた部分がありながらも、全体ははじめと最後の快活な雰囲気に支配され ている。即興に由来しないかもしれないが、この曲を聞いていると即興演奏をしているシ ョパンの快活明朗な表情や身振りが伝わってくるようだ。

■前奏曲「雨だれ」変ニ長調 作品28の15
ショパンの作品の中でもあまりに有名なこの曲 は 、『 24の前奏曲集 』に含 まれている。す べての長短調の楽曲からなるこの曲集の中では、この「雨だれ」が最も長く、ほかの曲 は1分にすら満たないものも多い。24のすべての調による曲集の発想として、これまで研 究者たちはバッハの『平均律クラヴィーア曲集』からの影響を指摘してきた。実際ショパ ンは幼いころからバッハに取り組んで研究を重ねてきたようである。現代的な意味での 長調・短調という概念と響きが確立されたのは古典派の時期であり、バッハの時代には まだまだ次世代のものだった。つまり、ショパンの時代は調性原理とその響きは歴史の浅 いものであった。バッハの平均律が革新的な挑戦だとすると、ショパンの「前奏曲集」は 確立後の一種の記念碑的な作品といってよいだろう。全曲を通して変イ音が連打され、 そ れ が 雨 の 降 る 情 景 と し て よ く 語 ら れ る が 、『 2 4 の 前 奏 曲 』 の 歴 史 的 意 義 を 踏 ま え る と 、 この主音の連打はまた違った意味に感じられるのではないだろうか。

■ピアノ・ソナタ 第2番「葬送行進曲付き」変ロ短調 作品35
ショパンは習作的な第1番を含めて生涯にソナタを3曲書いている。比較的若くして亡くなっ ているにしても、ピアノの詩人と言われた音楽家にしては数が少ないような気もする。ピアノ・ソナタと聞けばピアノ音楽の王道ジャンルのイメージがあるが、実はすでにショパンの時代には、形式ばった堅苦しい賞味期限切れのジャンルとなっていた。そのことは、ショパンとほぼ同時代のフランツ・リストがその長い創作人生において、たった1曲しか作曲していないことを思い起こせばよいだろう。
だがこのソナタは、この賞味期限切れゆえに、ショパンは想像の翼を広げたのであろうか とも思わせる例外的な性格を持つ。通常、冒頭・最終楽章がソナタ形式をとるのが常套手 段であるところ、このソナタでは第1楽章のみである。第2楽章の3部形式によるスケルツォ の次には、第3楽章にかの有名な既作の葬送行進曲を配するという型破りの楽章構成である。続く終楽章はさらにそれを上回る別格の楽章で、終始両手がオクターブで急速に 進行し、何が起きているのかと聞き入っている間に終わりへとなだれ込んでしまう。通常の 終楽章に用いられるロンド・ソナタ形式の華々しい終結を想像すると、まったくの肩透かし でさえある。
この破格ぶりからは、パリで成功を収めつつある音楽家ショパンが、時代遅れ のジャンルだからこそあえて新たな生命を吹き込もうと挑んだ気概すら感じられる。

■舟歌 嬰ヘ長調 作品60
「 舟 歌 」はヴェネツィアのゴンドラ乗りの歌にそのイメージの起源をもつ 。性 格の明確なあたかもいちジャンルのようにしてバロック時代以来、様々な作曲家によって作られている。 オペラアリアや、歌曲としてのそれも作られていたが、時代が下ると器楽曲の舟歌も作ら れるようになる。メンデルスゾーンの「無言歌」に含まれている舟歌や本曲もそのような 音楽文化の産物であるといってよい。

■ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 作品58
 第2番からほぼ5年のちに作曲されたソナタである。第1楽章はソナタ形式で書かれて おり、決然としてかつリズミカルな第一主題、ショパン得意のノクターンかのような第2主 題によって音楽が展開される。第2楽章はスケルツォで、急速なパッセージを主要主題にもつなかで、中間部の左手と右手の和声的な語らいを思い起こさせるような部分が挿 入される三部形式。第3楽章は楽章間の性格を意識したのか、第2楽章の終結部を受 け止めるかのような短い序奏で始まり、それに続いてCantabileと指示されたショパンの 甘美で切ないメロディが主要テーマとして始まる。第4楽章はロンド形式をとって構築的 でソナタらしい華々しさをもって最後を迎える。
挑戦的な第2番ソナタとは一線を画し、古 典的なソナタの持っていた構築性を利用して、ショパンの多様な音楽的な美意識が一 つの世界として完結し、現前しているかのようである。

 

日時:2017年10月17日(火)19時開演
会場:ザ・フェニックスホール
料金:全席自由 3,000円 学生2,000円
お申込みは下記のいずれかへ
・KONTA Inc.order@konta.co.jp(予約のみ当日のご精算になります) 
・ザ・フェニックスホール(平日10時〜17時)
・イープラス(24時間・セブンイレブンやファミリーマートで発券可能・スマホで手数料無料にも!)